日本では古代から様々な恒例祭祀が行われており、その多くが現在まで引き継がれています。
今回は養老令の注釈書である令義解の記述をもとにして神祇令記載の恒例祭祀である鎮花祭についてわかりやすく解説していこうと思います。
こちらのページでは神祇令記載の恒例祭祀の一覧を紹介していますので併せてご覧ください。
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神祇令から鎮花祭に関する記述を原文を書き下し・現代語訳して紹介
季春条 鎮花祭
謂。大神狭井二祭也。在春花飛散之時。疫神分散而行癘。為其鎮遏始有此祭。故曰鎮花
【書き下し】大神、狭井の二祭なり。春花飛散の時に在りて、疫神分散して癘を行ふ。その鎮遏の為に、必ずこの祭りあり。故に鎮花といふ。
【訳】大神神社、狭井神社の祭りである。春になって花が散る頃に、疫神が分散して病を起こす。その疫神を鎮めるためにこの祭りが行われる。故に故に鎮花という。
以上の神祇令の記述から、季春(三月)に行われる疫神を鎮めるために行われている祭りであるということが理解できます。
大神神社で行われる祭りということで大神神社の御祭神が疫神と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、大神神社の御祭神が疫神というわけではなく大神神社の神の御神徳を仰ぎために行われるということを確認したうえで次の段落に進んでください。
鎮花祭とは大神神社で行われる薬まつり
大神神社とは奈良県桜井市に鎮座する最古の神社と言われているお社で、神名式では大神大物主神社と称されています。狭井神社は大神荒魂神社と称されている大神神社の摂社です。この名前からもわかる通り大神神社は大物主大神、狭井神社は大物主大神の荒魂をお祀りしていることが分かります。
大物主大神は古事記にて崇神天皇の御代に疫病が流行した際に天皇の枕元に現れ、「意富多多泥古という人物に私を祀らせれば病は収まるでしょう」と話し、天皇がそのようになさると見事に疫病が止んだとされていあます。
また、大神神社では大国主神と少彦名命も相殿に祀っており、両神のいづれも因幡の白兎の条で毛皮を剥がれた白兎の傷を治したことや酒は薬として用いられたことから薬に関する神とされています。
このような記紀等の記述を根拠として大神神社で疫神を鎮めるための神事を行われてるようになり、鎮花祭は別名薬まつりとも呼ばれています。この祭りでは特殊神饌として薬草が供えられ、多くの医療関係会社・製薬会社からの奉納があります。