GHQによる神道指令の発出以前は官国幣社や府県社以下の神職任用については政府が法令を定めていましたが、戦後の神職養成は新たに設立された神社本庁に委ねられることになりました。
今回は戦前の神職資格の取得方法についてお話していきます。
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戦前の國學院大學では学正・一等司業・二等司業の3つの神職資格を付与
現在は皇學館大学や國學院大學や神職養成学校・検定講習を受けるなどの方法がありますが、戦前は皇典講究所が運営する國學院大學が神職階位を付与していました。
戦前の神職資格について国家が直接付与していたと思っている方も多くいるかと思いますが、実際は皇典講究所という財団法人が運営する國學院が神職資格の付与を行っていたのです。
詳しくはこちらの記事で紹介していますが、現在は浄階・明階・正階・権正階・直階という5つの階位が存在します。
これに対して戦前の神職資格では、学正・一等司業・二等司業という3つの階位に分けられていました。
学正は奏任待遇、司業は判任待遇の神職となることができます。
現在はすべての神社の最高責任者を宮司と言いますが、明治期には官国幣社の最高責任者のみを宮司と呼び、府県社には社司、それ以下の郷社・村社・無格社・それ以外の神社には社掌という地位にある者がそのお社の最高責任者として任命され任務に携わります。ただし、府県社に社司の監督のもとで社務を行う社掌もいましたので、社掌という職にあるからと言って郷社・村社・無格社の最高責任者の地位にあったとは言えませんのでご注意ください。
明治の神職任用令では
官国幣社について宮司と一部の大社に置かれる権宮司は奏任待遇、宮司を補佐する立場である禰宜及びそれ以下の主典・宮掌は判任待遇、
府県社以下について社司・社掌は判任待遇
と規定されています。
以上まとめると、学正は官国幣社の宮司に、司業は府県社以下の現在でいう宮司の職に就けるということです。
神社本庁下の現行制度では別表神社神職には明階、その他の神社では権正階の資格が必要ですので分かりやすく説明するのであれば、
学正=明階
一等司業・二等司業=正階・権正階
と説明することもできるのかもしれません。
戦前の府県社以下で社司・社掌になる方法について
明治 28 年 8 月 7 日制定の「府社県社以下神社神職登用規則」では社司・社掌の資格について
第一条 社司・社掌試験に合格した者
第二条 明治以前に五代以上引続きその神社に奉祀する者の子孫
神宮皇学館本科または専科を卒業した者
皇典講究所(國學院)が付与するの学階証書を有する者
満二年以上判任待遇以上の職にある者
と定めており、検定試験を受験する他にも國學院や皇學館を卒業することが社司・社掌となるための要件であることが分かります。
神宮皇學館での神職の資格は本科・専科・学部・普通科によって異なる
ここからは國學院と同様に神職の養成に携わった神宮皇學館での資格取得方法について説明していきます。
ここまでの内容を振り返ってみると財団法人である皇典講究所が運営する國學院が神職資格を付与していたということです。
では官立の学校である神宮皇學館ではどのように神職資格が付与されていたかというと、皇學館の卒業証書を以って神職資格取得とみなされていました。
昭和期に入ると神宮皇學館はこれまでの本科(4年制)と専科(3年制)の分類を改編し、本科・専門部・学部・普通科というコースを設けました。
このうち本科・専門部・学部の卒業生には学階学正が、普通科の卒業生には一等司業の資格が付与されていました。
以上が戦前の神職資格の説明です。
現行の神職資格取得の方法についてはこちらのページでお話しておりますのでぜひご覧ください。