古事記と日本書紀で伊邪那岐命が黄泉の国に行ってしまった伊邪那美命のもとを訪れた黄泉国訪問譚では黄泉の国についていくつかの特徴が語られています。
前回は「黄泉の国はどこにあるのか」という問題について2つの説を提示してみましたが、今回も黄泉の国に関するお話として古事記と日本書紀の内容を確認しつつ黄泉の国が横穴式石室を表した世界ではないかと言われる理由を確認していきます。
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黄泉の国についての古事記・日本書紀の記述
まずは黄泉の国についての記述を確認しておきましょう。
黄泉国訪問譚のあらすじ
伊邪那美命を追って伊邪那岐命は黄泉の国に至り、殿の縢戸から入った時に伊邪那岐命は伊邪那美命に「私たちの国に帰ろう」と話し、それに対して伊邪那美命は「私は黄泉国の釜の火で煮炊きした物を食べてしまった。黄泉の神と相談してくるから決して姿を見ないように」と返した。伊邪那岐命はしばらく待っていたが、結局火をつけて姿を見てしまった。伊邪那美命には蛆がたかっており、恐ろしい姿になっていた。驚いた伊邪那岐命は急いで逃げ、途中追いかけてきた黄泉醜女に山ぶどうやタケノコを投げ、黄泉平坂の坂本に至るときには桃を投げて追い払った。最後は伊邪那美命が自ら追ってきたが伊邪那岐命は黄泉平坂を岩で塞ぎ、この世界に逃げ帰った。
以上が黄泉の国の特徴について記した簡単なあらすじです。今回も前回と同様に重要なポイントは太字で示しています。
黄泉の国と横穴式石室の関係について説明する前に、次の段落で横穴式石室の特徴について説明してきます。
横穴式石室は羨道と玄室からなり、追葬できるのがメリット
次に横穴式石室の特徴についてお話しします。
横穴式石室は羨道という通路と棺を設置する玄室からなります。
こちらが簡単なイラストです。羨道を塞ぐ岩を動かせば何度でも内部に侵入し棺を設置することができます。
代表的な横穴式石室としては奈良県の石舞台古墳が挙げられます。
横穴式石室と通常の古墳の違い
横穴式石室と通常の古墳の大きな違いは追葬が可能かどうかです。
一般的な古墳は死体を入れた棺に盛り土をしてつくられるので新たに棺を設置することは困難です。
これに対して横穴式石室は通路と棺を設置する空間を設けることで、出入り口を塞ぐ岩を動かせば簡単に新たな棺を設置することができます。
黄泉の国と横穴式石室には関係があるとされる理由
ここから黄泉の国の特徴と横穴式石室の共通点について確認していきましょう。
ポイント
①黄泉の国は死者の国である→死者を葬る施設である横穴式石室と似ている
②暗闇→横穴式石室も同様に暗い
③蛆がたかった身体→死体を安置するため虫が湧いていたはず
④通路を通って地上へ→横穴式石室には羨道という通路がある
⑤出入り口を岩で塞ぐ→横穴式石室は追葬のために岩で出入り口が塞がれた
以上のように横穴式石室と黄泉の国には共通点があります。
「黄泉の国はどこにあるのか」についてはこちらでお話していますので、ぜひご覧ください。