神社での祭典に参列する場合や御祈祷を受ける際には玉串という木の枝を用いて神様に手を合わせることが多くあります。
玉串を用いて拝礼することは一般の方にはめったにないことだと思いますので、作法に迷ったことがある人は多いのではないかと思います。
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目次
玉串とは榊の枝に紙垂や木綿をつけたもので、神社における神様へのお供え物としての意味を持つ
玉串とは基本的に榊の小枝に紙垂や木綿をつけたものをいいます。
神社のお祭りや御祈祷では神様に米・酒や魚、野菜などのお供えものを捧げ、神職が祝詞を読み上げることで神様の力を称えるとともに感謝や願い事を伝えます。
ご祈祷においては神職の役割は祈願者に代わって祈願の旨を申し伝える神様と祈願者の仲取り持ちであり、祝詞の奏上だけでは祈願者が直接的に敬神の心や祈願の内容を伝えたことにはなりません。
祈願者が直接的に神様に祈願の旨を申し伝えるのが玉串を用いた拝礼ということです。
玉串という言葉の解釈は様々ですが、私は「玉」が「魂」に通じていると考えています。自分の魂すなわち敬神の真を捧げ、これまでの生活に感謝し、これからの生活について祈願することが玉串拝礼の意味だと考えます。
玉串の起源は『古事記』天岩戸隠れの段に現れる賢木
玉串の起源は『古事記』の天岩戸隠れの段に現れる賢木が起源とされています。
天の香山の五百津真賢木を根こじにこじて、上枝に八尺の勾玉の五百津の御すまるの玉を取り着け、中つ枝に八尺の鏡を取りかけ、下枝に白にきて青にきてを取り垂でて...
現代語訳:天の香山の枝葉にの茂った榊を根こそぎ掘り取って、上の枝には八尺の勾玉を取りつけ、中の枝には八尺の鏡を取りかけ、下の枝には楮の布と麻の布でつくられた祭器具を取りつけ...
こちらは『古事記』の該当部分の内容の抜き出しです。
スサノオ命が高天の原という天上世界で乱暴を働いたことに激怒したアマテラス大神は天岩戸に隠れてしまい、アマテラス大神を岩戸から出すために八尺瓊勾玉や八咫鏡を飾った神聖な木を設け、祝詞の奏上や歌舞の披露を行ったということが記されています。
【なぜ玉串に榊が用いられるのか】常緑樹である榊とイチイ・ガジュマルの枝
現在、神社で用いられている玉串の多くは榊の枝ですが、榊の枝が用いられるのには理由があります。
それは榊は一年中葉をつける常緑樹だからです。榊の木は一年間絶えることのなく葉を残し続け、常に栄えていることから用いられます。
古代の日本人にとっては春から秋の間に発芽から刈り取りを終える稲に対して、一年中葉をつける榊は神に供えるのにふさわしい神聖な植物だと考えられていたのかもしれません。
ただし、榊の分布は基本的に北関東辺りを分布の北限としており、東北地方や北海道ではイチイの枝が用いられるということもあるようです。
また、沖縄ではガジュマルの枝が用いられるということもあるようですが、イチイもガジュマルもも常緑樹という点は共通しています。
サカキの語源は「賢木」「境木」「栄木」が転じたされる
ここまでで基本的に玉串には榊の枝が用いられるということを紹介してきました。その榊という語源について簡単に紹介します。
榊というのはもともとは固有の植物名ではなく、下記記載の理由から徐々に現在、榊と認識されている植物にサカキの名称があてられていったと考えられ、語源についてはいくつかの説があります。
1つ目は先ほど紹介したように一年中、葉をつけて栄えている木「栄木」ということからサカキと呼ばれるようになった説です。
2つ目は神道では俗的な場所と神聖な場所が分けられることはしばしばあります。例えば神社の境内地と外の間には基本的に鳥居が設けられていることが挙げられます。鳥居には榊の枝が用いられることが多くあるように、。神聖な場所とそうでない場所とを分けるために用いた木「境木」ということからサカキと呼ばれるようになったという説があります。
【玉串奉奠のやり方】受け取り方など方法をイラストを用いて解説
玉串を用いた拝礼はこのイラストのように行います。詳しい方法については以下の説明をご覧ください。
- 玉串を受け取るときは左手は下から添えて葉を支え、右手は上から枝を持ちます。受け取った後、神職は一歩後退し笏を出し、小さく頭を下げますので、それまで待ちます。
- 玉串を置く台の正面まで進み軽く一礼(15度)します。
- 3~4歩進み神前で一礼(45度)。
- まず玉串を時計回りに90度(1/4回転)回し枝の根元が自分に向くようにしてから、両手で根元を持ちます。
- 次に手を右手を玉串の下にしつつ、右手を奥,左手を手前にして持ち玉串を180度回転させます(この時、玉串をつかむのではなく掌でしたから支えるのがポイント。)。
- 台まで距離があるときは少し進み出て玉串を捧げ台にのせて2礼2拍手1礼。
- 最後に一礼(15度)します。