神社によって本殿の建築様式が違うことはご存じですか?
具体的には住吉造、神明造、大社造、流造、権現造などなどたくさんあります。
以下のツイートとそのリプ欄で手作り感満載のイラストや写真を使って簡単にまとめていますので良ければご覧ください。
社殿の建築様式について
簡単に分類するには
①御扉の位置
②屋根の形状 に注目しましょう!①について
棟に対して垂直に御扉があるのが【妻入り】
棟に対して平行に御扉があるのが【平入り】です②について
Vの字に伸びる屋根が【切妻造】
4方向に伸びる屋根が【入母屋造】です続く↓ pic.twitter.com/sl0dy6niMm
— ⛩たむ⛩【神社関係者】 (@kytm16) November 12, 2020
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目次
本殿とは常設の神座
もともと神社には本殿というものがありませんでした。
古代の人々は神籬(木を植えて神座とするもの)や磐座(岩を集めて神座とするもの)に宿る神に向けて祭祀を行なっており、神域は磐境や垣で表され、注連縄を張っていました。
日本最古の神社とも言われる奈良県桜井市の大神神社がそれを示す例で、大神神社は本殿を持たず拝殿の後ろにあつ三ツ鳥居を通して御神体である三輪山を拝します。
このように古代は自然物に神が宿ると考えられていましたが、6世紀になると大きな転機が訪れます。それは仏教の伝来です。日本で仏教が受け入れられ蘇我氏らの氏寺がつくられると、感化された神道は7世紀以降 本殿という常設の神座を設置するようになったのです。
これが本殿の歴史とつくられた理由です。
ちなみに、一般的な神社に拝殿がつくられるようになったのは江戸時代中期以降とされています。
拝殿は名前の通り我々が拝するための場所で本殿は神座があり神様がいらっしゃる場所です。
【神社社殿 本殿の種類】妻入り型と平入り型
まずはこの二つに大別できます。
御扉(入口)の位置が異なります。
妻入り型
妻入り型とは古代の住居から発展した型。
御扉が棟(屋根の逆V字の重なった部分)と垂直。
平入り型
穀物倉庫から発展した型。
御扉が棟に対して平行。
切妻造と入母屋造
切妻造
一般的な建築様式で、よくある逆V字型の屋根。
入母屋造
権現造や日吉造などに用いられる、屋根が4方向に延びる様式。
また屋根は仏教伝来前はまっすぐ、仏教伝来後は反りのある場合が多いです。
千木と鰹木
千木には内削ぎと外削ぎがあります。
内削ぎは男千木、外削ぎは女千木とも呼ばれており、男神を祀る本殿の千木は内削ぎ、女神の祀る本殿の千木は外削ぎになっていると説明されることがよくありますが、これは間違いです。
例えば、伊勢の神宮について内宮・外宮の御祭神である天照大御神・豊受大御神は共に女神であすが内宮は外削ぎ、外宮は内削ぎとなっています。
上が内削ぎ、下が外削ぎです。
鰹木とは千木の間に並んでいるものです。
男神の場合は奇数、女神の場合は偶数と言われていますが、これも千木の削ぎ方と同様に間違いであり、社殿の大きさによって数が異なっているだけです。
本殿の建築様式について
神社の建築様式と御祭神には直接的な関係はありません。しかし、著名な神社がつくられると その神社の建築様式に倣い新たな神社も作られていくようになっていきます。例を挙げると、
- 伊勢神宮は神明造で、天照大御神を祀る神社には神明造を採用することが多い
- 出雲大社は大社造で、国つ神を多く祀っている出雲地方周辺では大社造が多い
- 春日大社は春日造で、全国の春日大社の分社は春日造が多い
といった具合に間接的に御祭神と建築様式がつながっていったと考えられます。
ここからは具体的な建築様式について説明していきます。
大社造
形式:妻入り
屋根:妻切造
主な神社:出雲大社、須佐神社(島根県)
※写真は出雲大社と神魂神社
特徴:屋根は大きく反っており曲線的なイメージで千木は置千木と言われる形式をとっています。内部の心御柱という柱が社を支え、これが御神体に見立てられることもあります。本殿全体は正方形に近く、心御柱を中心に①神座が置かれる御内殿の間②相殿神を祀る中の間③格子の間④御扉(妻戸)の前の妻戸の間に分かれています。
出雲地方の神社で用いられる形式で、島根県の神魂神社が現存する最古の大社造です。
弥生時代の住居を転用した形と言われています。
住吉造
形式:妻入り
屋根:切妻造
主な神社:住吉大社(大阪)
特徴:屋根は直線的で、内部は内陣と外陣の二室に分かれており全体でみると長方形になっています。
大嘗祭のときに造られる大嘗宮に似た建築様式であるとされています。
神明造
形式:平入り
屋根:切妻造
主な神社:伊勢神宮
※写真は東京大神宮拝殿です
特徴:弥生時代に穀物を貯蔵していた高床式倉庫を転用した形です。屋根は直線的で千木は屋根を突きぬいて交差しており、本殿全体は長方形に近いです。
心御柱は床上に出ることはなく、祭式は基本的に閉扉のまま行われます。
伊勢神宮の神明造は唯一神明造と言われており、神明造の中の特殊計区別されることもあります。
流造
形式:平入り
屋根:切妻造
神社:上賀茂神社、下賀茂神社、伏見稲荷大社
特徴:神明造から発展した形で、屋根の一方が伸びている形式で千木や鰹木がないものも多くあります。
最も多い建築様式で神社のうち約半数が流造による建築であるとも言われています。
浅間造
形式:平入り
屋根:切妻造
神社:浅間神社
※写真は富士山本宮浅間大社
特徴:拝殿が1階、本殿が2階になった形式で富士山を背後にすることを想定した美しい建築様式です。1階部分は入母屋造・寄棟造でその上に流造の社が乗っています。
八幡造
形式:平入り
屋根:切妻造
神社:宇佐神宮、石清水八幡宮
特徴:本殿が前後に並んだ形式で前後どちらも本殿としての役割を果たしています。後殿には御神体が前殿には椅子が置かれており神饌は前殿に供えます。
前殿と後殿の間には造合と呼ばれる部分が付属しています。
権現造
形式:妻入
屋根:入母屋造
神社:日光東照宮、大崎八幡宮
特徴:豪華絢爛な彩色がされていることが多く、仏教の影響を強く受けている建築様式です。権現造とは拝殿・石の間・本殿が複合した社殿の総称です。
最も多い本殿の形式は流造。二番目は春日造
全国の神社本殿の形式として最も多いのは流造で5割程度がこの形式による建築である言われています。
その次は春日造で1割程度と言われています。
神明造はもともと伊勢神宮の社領に鎮座する神社を中心にで用いられた建築様式で大社造は出雲周辺で見られる建築様式であるため、そこまで数が多いわけではないようです。
本殿の規模を測るときは「間」という単位を用いる
本殿の他、日本建築の場合、梁(平側)と桁(妻側)という地面と平行のパーツが建物を構成します。
梁と桁を支えているのが柱で、この柱の間の数を「間」という単位を用いて本殿の規模を測るのです。
現在、「間」という単位は6尺(1.8m)と規定されていますが、規定前は単に柱の間の数を数えるだけで実寸法ではありませんでした。
柱の間の数が1つならば1間社、3つならば3間社と言われ、伊勢神宮正宮をはじめとして三間社が一般的ですが、5間社など大規模な本殿も存在しています。