神社において神様に奉仕をしている神職になるには資格を取得する必要があります。正確に言えば神社本庁に所属する神社で神職として奉仕する場合の話ですが、法人として存在するほとんどの神社が神社本庁に所属する神社ですので、今回は神社本庁が与えている神職資格について紹介していきます。
また、神主の資格には階位というものが存在し、神道に関する理解や経験によって上から浄階・明階・正階・ 権正階・直階という5つの階位に分類されます。この他にも神職の身分は階級(特級・一級など)や職階(宮司・禰宜など)があり、神社の内部に直接かかわった経験のある人でないと複雑に感じる点が多いと思います。以下でわかりやすくまとめていますのでぜひ参考にしてください。
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目次
神職の資格取得の制度は検定試験と無試験検定に分類される
神職の資格を取得するためには基本的には検定試験を受けることになっています。しかし、実際のところ検定試験を受けて資格を取得するという人は非常に少なく、多くの人は大学・養成所などの教育機関に通い、神社本庁が指定した単位を取得することで検定を受けることなく資格を取得しています。これを無試験検定と言います。
自動車学校をイメージするとわかりやすいです。試験場に直接行き、実技と筆記の試験を受けて免許を得ることができますが、多くの人は自動車学校で実技をクリアしてお墨付きをもらった状態で試験場に行くことと類似していると考えていただけるとよいと思います。
さて、神職の資格取得の際には学識と実務経験の2つの点から審査され、それぞれ別個にクリアしていくことで最終的には明階までは取得できることになります。
学識というのは祭式作法や祝詞作文、神道史の勉強のことです。一方、実務というのは神務実習のことで実際に神社での奉仕を体験します。
【神職資格の取得方法①】皇學館大学または國學院大學に進学する
神職資格を取得する1つ目の方法は全国に2か所ある神道系の大学に進学する方法です。神社本庁の定める神職資格は皇學館大学や國學院大學の神職課程を履修することで取得できます。皇學館大学では文学部神道学科、國學院大學では神道文化学部が設置されており、ここで神職課程を修了することで明階検定合格正階、大学の推薦を受けた者は卒業時点で明階を取得することができます。明階検定合格正階とは明階相当の学識・正階相当の実務経験ということです。明解検定合格正解の者は神社に奉職し、2年程度の実務を経験することで明階を取得できます。
神職の資格を取ることができるの大学と聞くと、所属する学生は社家と呼ばれる神社子弟ばかりだと思われますが実際には半数以上が非社家です。また、神職になるつもりはないが神道を勉強したいという学生も少数ではありますが所属しており、このような人々は一般企業だけでなく、お守りの縫製会社や神社新報など神道に関する企業に就職する道も開かれています。
皇學館大学と國學院大學の違いについては以下のページ紹介しております。入学する機関を迷っている方、養成所の歴史を知りたい方はぜひご覧ください。
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【神職資格の取得方法②】皇學館大学または國學院大學の専攻科・大学院に進学する
2つ目は皇學館大学と國學院大學の専攻課程に進学する方法です。両大学には専攻科(専攻課程Ⅰ類)と大学院(専攻課程Ⅱ類)が設置されており、
専攻科では1年で明階検定合格正階
大学院(博士前期課程)では2年で明階
が取得できます。
いずれも入学資格は大学卒業であり、大学卒業直後の方だけでなく60代の方もいらっしゃいます。専攻科は大学4年間で取得する資格を1年間に凝縮して学ぶことになるのでスケジュールは大変厳しいですが、大学を卒業している者にとっては非常にコスパが良いです。また國學院の専攻科は神社庁からの推薦を必要としています。推薦は各都道府県の神社庁を訪ねて簡単にもらえるようなものではありませんので、主に社家出身者を想定した機関と言えます。
また両者ともに一応入学試験が課せられます。私は皇學館大學の神道学専攻科の卒業ですが、入学試験は「論述を中心とする学力試験」と「面接」で構成されていました。学力試験は古事記や日本書紀からの出題が多く、問題形式は高校や大学の国語の入試問題に似ており、また神の名前や神道用語の読み書きについても出題されていたと記憶しています。面接では卒業後に神職として奉仕する意思や神職を志した理由について質問され、筆記試験よりも面接が重視されているように感じました。
志望者数と定員が毎年同じくらいですので、神道を学びたいという気持ちがあれば入学自体は難しくないと思います。
【神職資格の取得方法③】全国各地の神職養成所に進学する
全国には下記の養成所が存在しています。
山形県の出羽三山神社神職養成所/宮城県の塩竈神社神職養成所/愛知県の熱田神宮学院/京都府の京都國學院/三重県の神宮研修所/島根県の大社國學館
詳細は各機関により異なりますが、だいたいは2年間在籍で「正階」が、1年在籍で「権正階」が授与されます。
養成所によっては推薦等が不要で高校卒業程度の学力があれば入学が可能です。これらの養成機関が大学の神職課程と異なるところは実際の神社での実習が豊富でである一方で、学識部分についての修得は大学に設置されている養成機関に劣るという点です。卒業後は神社実務についての知識が豊富な点を強みとした活躍が期待されます。
また、通信制の養成所もあり、大阪國學院では神社庁の推薦が必要ですが通信で直階を取得することができるようです。
【神職資格の取得方法④】神社庁主催の検定講習を受講する
春・夏に神社庁によって主催される検定講習会に一か月程度通うことで資格を取得することができます。
年によって直階であったり権正階であったり対象となる講習が決まっていて、直階が対象である時以外は開催される講習が自分の保有する階位の1つ上でなければ受講はできません。これを何度も繰り返すことで階位を上げていくこともできますが、朝から夕方まで授業なので学生生活から遠ざかっている者にとっては割としんどいそうです。
また、この講習を受けるには奉職先が決まっているなど推薦がなければならないため、社家や既に資格を保有している者を対象としている制度と言えます。
【神職資格の取得方法⑤】皇學館大学と國學院大學主催の検定講習を受講する
各都道府県の神社庁主催の検定講習以外にも皇學館大学と國學院大學主催の検定講習があります。
基本的に毎年夏や春休み期間に1か月間の検定講習会が開催されています。
どちらに参加するにも奉職予定神社の宮司の推薦並びに奉職予定神社の鎮座する都道府県・神社庁長の推薦が必要であるため、社家出身者の受講が多いです。
【まとめ】検討している方の年齢と出身によって適した養成機関は異なる
神職として奉仕していきたいと決意した今のあなたの年齢と出身によって進学するのにふさわしい養成機関は異なります。
まずは中学生・高校生の方へ
皇學館大学と國學院大學に進学あるいは他の大学で神道以外の勉強をしてから専攻科・大学院に入学するか全国各地の神職養成所に進学するのがよいでしょう。
高校生だと多くの方が高校卒業後そのまま皇學館大学や國學院大學に入学しますが、一旦は他大学に進学することも選択肢の一つです。
そのまま学部に入学する場合はいろいろな神社に実習に行ったり、たくさんの親しい先輩をつくって神社界のことを詳しく知ってから奉職できるというメリットが、他大学を卒業してから専攻科・大学院に入学した場合には神道以外の学問を学び専門分野を二つ持てるというメリットがあります。
次に大学生の方へ
皇學館大学と國學院大學の専攻科に入学するのが第一の選択肢です。もし、神職の資格を取得するだけでなく神道を詳しく学びたいという気持ちがあるのであれば大学院への進学も検討してみましょう。
第二の選択肢として、もしあなたが社家出身で大きな神社に奉職せず、実家の神社で神職とそれ以外の職業の二足のわらじを履くつもりであれば、検定講習会がよいでしょう。
そして社会人で非社家の方へ
全国の神職養成機関や専攻科・大学院に進学しましょう。
もし、縁故があり奉職が決まっているのであれば推薦を受けて検定講習会を受講するのも良いでしょう。
最後に社家出身の社会人の方へ
現在のお仕事との2足のわらじをはくのであれば、検定講習会の受講が第一の選択肢です。
これから神職として生きていきたいのであれば専攻科・大学院、最終学歴が高校卒業であれば養成所も検討すべきでしょう。
神職は大変な仕事ではありますが、神様に仕えることのできる素晴らしい仕事です。
興味のある方は是非検討してみてはいかがでしょうか。